【作者】
徳富蘇峰(1863〜1957)
明治・大正・昭和時代の評論家・史家・漢詩人。名は正敬・猪一郎。蘇峰はその号。熊本県水俣の出身。弟健二郎(蘆花)は小説家として名高い。蘇峰は一世の文豪で、学問も広く、その著書は三百余冊に及ぶ。漢詩人としても「今山陽」の称がある程で、詩集には「徳富蘇峰先生作詩集」「蘇峰詩集」「蘇峰百絶」等がある。
【訳意】
東山三十六峰は一面の雲に覆われてさびしく薄暗く、京都の町中も郊外も雨がびしゃびやと乱れ降っている。この雨の中を破れ笠をかぶり、ぬのこをまとい、殉難烈士の墓前に涙をながしてぬかずけば、秋気はことのほか肌に冷たく感ずるのである。